場面緘黙治療法アイディア集12

今回は、加点方式で考えるという方法です。

何かできなかったときに自分の頭の中で減点するのではなく、できたときに加点するという考え方です。

たとえば、飲み会で話せなかったことに減点するのではなく、飲み会に行ったことを加点するということです。

また、(できないことに目を向けるより)「できること・話せることメニュー」を自分の頭の中、もしくはメモとして持っておいて、人と話すときに使うようにするとよいと思います。

たとえば、「趣味・休日の過ごし方を聞かれたら、こう話す」みたいなものです。

場面緘黙治療法アイディア集11

今回は、「相手がどう思ったかを簡単な図にして示してみる」という方法です。

私は、人と話すとき、相手がどう思うか・どう思ったかを話す前や後に気にしすぎてしまうところがあります。

そこで、まだ実践はしていないのですが、これからやってみようと思う方法が一つあります。それが、前述の「相手がどう思ったかを簡単な図にして示してみる」という方法です。

この方法は、相手がどう思うかを気にしすぎてしまうのをやめるためのものです。方法としては、「相手がこう思ったはず」という考えを漫画のように簡単な図にしてみるというものです(自分と相手の二人の人間の絵を簡単に描いて、相手のセリフを吹き出しに入れる)。たとえば、相手のセリフとしては、「○○(私)のこと嫌いだなぁ」などです。このように図にして客観化してみると、それは思い込みだったのでは、考えすぎではと自分でも思い直せるようになるのではないかと思います。

 

場面緘黙治療法アイディア集10

10回目になりました。今回は、「無意識に着目する」です。

緘黙症状が長く続いている場合は、長い間、何らかの思い込みを無意識にしてしまっているということが考えられます。

私の場合は、罪悪感、劣等感、自信の無さなどです。

罪悪感は何で持つようになってしまったのか私自身不明です。「話せないから人に悪いことをしてしまっている」と思うようになったのがきっかけかもしれません。でも生まれながらに持っていた気もします。

劣等感、自信のなさは、話せないことからきていると思います。

緘黙症状によってこれらのマイナスの無意識の思い込みは出来上がってしまったと思われますが、この思い込みによってさらに緘黙症状が続いてしまっているということが考えられます。

まずは、このように思い込んでしまっていることを挙げてみるとよいと思います。無意識に思ってしまっていることに意識を向けるだけでよいと思います。思い込みによって緘黙症状が出てしまっているということに気づくことが大事です。

場面緘黙治療法アイディア集9

今回は、緘黙の症状として、「最初からできなかったこと」、「後からできるようになったこと」、「後からできなくなったこと」を分けるという方法です。

場面緘黙の症状といっても、人によってできること・できないことは違うと思いますし、同じ人でも年齢によってできること・できないことは変わってくると思います。

 

私の場合は、小中学校では一言も言葉を発していませんでした。(首を縦横に振って意思表示していました)。高校を知り合いがいない遠いところにしたので、高校以降は話しかけられたら会話できる状態になって、24歳の今に至るといった状況です。会話をするようになって気が付いたのが、(「あれを相手に言ったら悪いかも」と考えながら話すので)気楽に話題を提供するのが難しいということです。これは、幼少期からでなく、後からできなくなった(できないと気づいた)ことです。

【私の例】

最初からできなかったこと(幼少期から):社交の場での会話全般

後からできるようになったこと(高校以降):相手から聞かれたら話しかけること

                プレゼンのような一方向コミュニケーション など

後からできなくなったこと(高校以降):相手に気楽に話題を提供すること

 

このように、どのような状況で、緘黙の症状が治ったり(悪化したり)したのかを自分なりに分析できるとよいと思います。最初からできなかったことは、もともとの性格による思い込みで、後からできなくなったことは、それ以降の経験によるもの(経験による思い込み)だと考えられます。ここで言えるのは、どちらにしろ思い込みによって症状が出てしまっているいうことです。だから人によって、同じ人でも年齢によって、症状が違うのだと思います。(場面緘黙の本質は、ある人が、ある年齢で、ある状況下で、「ここでは緊張しなくてはならない」と脳が思い込んでしまっているから話せなくなっているというだけなのだと思います。誰かに病気にさせられたわけではなく、自分の思い込みが症状を作り出しているということです。それだけのことですが、当事者としてはつらいところですが。)

場面緘黙の症状は、自分の脳が思い込んでいるだけと思えれば少しは気楽になれるかなと思って書きました。

場面緘黙治療法アイディア集8

8回目は「質と量の両面からのアプローチ」についてです。緘黙治療には、「ただ場数を踏む」(「量」のみ考える)というのは適切ではないように思います。そのため、「質」にも着目してみようというのが今回のテーマです。

【「質」からのアプローチ】

緘黙の症状が固定してしまっている人は、場数を踏んで人と話すことに慣れるよりもまず、思考を変えることが必要です。

臨床心理学で、「認知再構成法」というトレーニングがあります。

日常生活において、ある出来事(よくないこと)を体験したときに「状況」、「感情」、「自動思考」、「適応的思考」、「感情の再評価」という5つの項目に分けて出来事を捉え直してみるトレーニングです。

例)知り合いのAさんに挨拶をしたが返事が返ってこなかった場合

「状況」…休日に買い物をしていて同僚のAさんに会ったため、挨拶をしたが相手の返事がなかった

「感情」…怒り60%(一つの感情につき100%をmaxとします。自分が感じたものをなんとなく数値化してかまいません。)、寂しさ50%

「自動思考」…Aさんは私のことを嫌いなのかもしれない

「適応的思考」…私が休日服だったので気づかなかっただけかもしれない、何か考え事をしていたから気づかなかったのかもしれない

「感情の再評価」…怒り20%、寂しさ20%

上記の例に沿って説明していきます。

「自動思考」というのは、出来事を体験して真っ先に起こってくる感情のことです。場面緘黙など対人面に不安のある人は、対人関係の出来事に対して、この例のように「私が嫌われている」などと悪い方に考えてしまいがちだと思います。ですが、「適応的思考」として、「別の見方もできないだろうか?」と自分の中で考えることで、「相手には別の問題があっただけで、自分はそんなに悪く思われていないかも」と思い直すことができます。そのため、最初に感じていた怒りや寂しさなどのマイナスの感情は軽減されていきます。このトレーニングを続けていくことで対人関係で悩むことを軽減できるのではないかと思います。

このような質的なトレーニングを積んだうえで、「量」も考慮するのであればさらに効果が期待できると思います。

 

【「量」からのアプローチ】

「一日に1回は自分から話しかける」、「3回に1回は飲み会に参加する」などと機械的に数を決めてしまうやり方です。緘黙の人はいろいろなことを考慮してしまいがち(「○○さんはこういう人だからこの話はやめたがいいかな」「この状況でこの話していいかな」)だと思うので、機械的に数で目標を立ててしまえば動きやすくなるかと思います。

 

この「質」と「量」の両面からのアプローチを心掛ければ、緘黙症状が軽減されやすくなると思います。よく、「場数を踏めば治る」と言ってくる人もいるかもしれませんが、惑わされず、「質」も意識してみることが大切と考えます。

 

【参考】

フレデリック・ファンジェ『自信をもてない人のための心理学』(紀伊国屋書店、2014年)

場面緘黙治療法アイディア集7

7回目の今回は、「他人を励ます・自分をコーチにつけるイメージを持つ」という考え方です。

もし場面緘黙の症状を持っているのが自分ではなく、(仲の良い友達など)他人だったら、客観的にどんなアドバイスをしてあげられるのかを考えます(場面緘黙の症状で悩んでいる自分はもちろん一人の人間なのですが、「(仲の良い人に)アドバイスするコーチとしての自分」と「悩んでいる自分」に分けます)。場面緘黙の人は自分に厳しくなりがちだと思うので、仲の良い人にアドバイスするようなつもりで自分に優しく接することができたらよいと考えました。

私が自分(今の自分もしくは緘黙の症状がもっとひどかった過去の自分)にアドバイスするんだったら…、「イヤなことは(深く考えずに、何らかの形で)相手にイヤだといっていいんだよ」ってアドバイスしますかね。シンプルなことなんですけど、なかなか私が苦手としていることなので。

日々、場面緘黙の症状に少しでも改善がみられたら、心の中で自分をほめてあげていいと思います。周りの人は、こういう症状の人が世の中にいるということを知らないので馬鹿にしてくることもあるかと思いますが、それに流されずに、自分のペースで進歩していると思ったら、自分をほめていいと思います。自分で自分を認められるようになることが、症状改善において重要だと思います。